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若年層に強い賃貸事務所 中央区の話

スウェーデンやドイツでは現在、新しく建てられるコンクリートの建物はほとんどが外断熱です。
また日本のように「ビルを建てては壊し、また建てる」というようなスクラップ&ビルドを繰り返すことはせず、古い無断熱の建物の改修にも力を入れていますが、その場合でもきれいに外断熱を施し、見事によみがえらせています。 ヨーロッパでの外断熱の研究は、一九七三年のオイルショックをきっかけに本格的に始まりました。
スウェーデンでは、エネルギーを使わない建築を実現するために、熱・湿気・気候・微生物・経済・医学・物理などさまざまな分野から専門家が集められ、互いの立場から意見交換が繰り返され、研究が進められました。 ドイツでは一九七六年に〈建築物のエネルギー節約に関する法律〉、翌年には〈建築物の省エネルギーのための断熱政令〉が公布され、本格的な建物の断熱が国をあげて行われました。
さまざまな分野から専門家が集まり、建物の省エネ、耐久性、居住性に関してベストの方策が検討された結果、外断熱以外には考えられないという結論に達したのです。 コンクリートのビル建築は、日本ではデザインと構造の分野のみ、つまり単に一級建築士によって設計されます。

しかしヨーロッパでは、前述のようにさまざまな分野の専門家がその設計に関わっています。 真に良い建築を目的としており、日本のようにデザイン一辺倒ではありません。
そして、さまざまな専門分野のなかで特に重要視されたのは「建築物理」という学問分野でした。 「建築物理」は、室内環境を劣化させる結露やカビをもたらす水蒸気の動き、さらに光、音、風など、住まいに関わる物理現象を総合的に考える学問です。
ヨーロッパでは住環境の研究に欠かせない学問として重要視されていて、ドイツでは建築学科の学生にも必修科目です。 しかし日本では、この「建築物理」の観点から住環境が検討され、建造されるということがありません。
日本でも建築家の学生は計画原論や環境工学という授業で建築物理について学びますが、設計に携わる多くの建築士には頭の片隅に忘れられた学問と言えるでしょう。 K大学名誉教授で音響学(建築物理の一分野)の大家であるM氏は、次のように述べています。
「科学技術がこれほど発達した時代に、多くの専門技術を結集しなければならない建築の制作に、ひとりの一級建築士で充分と考える人はいないだろう。 少なくとも、意匠、構造、環境の三者が協力しないで、質の高い建築が出来るわけがない。
こんなことは誰が考えても当然のことなのだ。 その三者が専門建築士として、当然の責任と権限を分担し、当然の報酬を得られるシステムがなくて、どうしてまともな建築ができるだろうか。
いまの一級建築士制度を変えることは、非常に困難なことで不可能に近いかも知れない。 しかし法律は解釈と運用の幅が広いものだから、いかようにも対応の可能性があるはずである。
それをしなければ、日本の建築は駄目になってしまうことを恐れる」(「建築環境工学の課題」)。 また、アメリカ在住の数学者で結露問題に詳しいE氏によれば、アメリカでもヨーロッパ同様、建物は建築士一人が設計するのではなく、機械工学、土木工学、電気工学などさまざまなエンジニアが総合的に関わって建てられています。

「残念ですが、住まいを造るときに何が真に重要であるのかという根本的な考え方が、日本と欧米で大きく異なっているのは事実」とE氏は語ります。 日本のように建築士(意匠・構造)だけで建築物のすべてが決められるのは、世界的には非常にめずらしいことなのです。
人が安心して暮らすための住宅を設計施工しようというとき、そのベ−スにさまざまな分野のエンジニアが参加することは、あらためて考えればきわめて当然のことではないでしょうか。 健康的で快適な環境はすべて、常に自然界との相関関係にあるからです。
おおげさに言えば、物理、化学、地学、気象、生物、さらに人間といった、地球上のすべての事象との相関関係のなかで、人の住まいはベストのものが探られなければなりません。 最近ではこれに「環境」という非常に重要な項目も加わりました。
それを、ただ一級建築士の資格を持った人だけに任せているのが日本です。 どこかに無理が出て当然です。
マンションは、手に入れる前は「デザインや立地条件」などに目が向くものですが、購入後実際に一年、二年と住んでみると、「安全で健康的で住みやすい家がいい」、あるいは「メンテナンスが楽でコストがかからない家がいい」というように、価値観は変わっていくものです。 どちらが本質的かと言えば、長年住んだあとの価値観のほうでしょう。
しかしこれまでの日本の住宅供給、特にマンション供給の世界では、前者の「表面的な、一見魅力的である」価値観を重要視して、顧客に物件を提供・提案しています。 住宅の価値というものの本質を知らずにマンションを購入して、取り返しのつかない「損」をしている人がどれだけいることでしょうか。

一九七0年代、日本では高度成長に伴う急激なマンションブ−ムが全国的に起こり、年間数万戸程度だったマンション供給量は一万戸にも上昇しました。 右肩上がりの経済成長がいつまでも続くという幻想が信じられていた時代でした。
そんななかで起こったオイルショックは、日本社会にも大きな波紋を投げかけました。 都会のネオンやテレビの深夜放送の自粛などが行われましたが、間もなくそれも復活し、日本はさらなるバブル経済へと突入していくことになるのです。
「省エネ住宅」については、日本でもオイルショック後に北海道の建築研究者を中心に進められました。 ただし、あくまで建築分野の専門家中心の研究であり、ヨーロッパのように住まいの内外で起こるすべての自然事象を熱・湿気・気候・微生物・経済・医学・建築物理など、さまざまな分野の専門家の連携で総合的・科学的に研究しようというものではありませんでした。
日本の高気密・高断熱の省エネ住宅が結露やカビといった、どうしても解決できない難題を発生させてしまった原点がここにありました。 しかし、日本でもこの時期から外断熱を理解し、その重要性に気づいていた人がわずかながらいました。
なかでも工学博士のT氏(現お茶の水女子大学生活科学部教授)、北海道大学名誉教授のA博士、故・E氏(江本工業側の創業社長)の三名は、いま日本で少しずつ熟しつつある外断熱マンションの種をまき、芽を育てたパイオニアといえます。 T博士は、一九七一年ベルリン工科大学へルマン・リ−チエル研究所へ留学、建築物理学に出会いました。
そしてオイルショックに揺れる一九七三年暮れに帰国、通産省(現経済産業省)のサンシャイン計画(外断熱実験住宅)に参画して、建物の省エネに関する実際的な研究に携わりました。 熱や湿気の挙動についての研究を総合的に進めた結果、外断熱がいかに優れているかを理解していたT博士によって一九七七年、初めての外断熱の実験住宅(湿式外断熱工法、断熱材はEPS・一0)が大阪府枚方市に建てられました。
この実験住宅は三年後に壊されましたが、外断熱の良さを多くの人々に知ってもらいたいと考えた博士は、自宅を外断熱で建てることを決意しました。


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